事例の中から、マニュアルについて書きたいと思います。

今回は、複合機のスキャン機能を説明するマニュアルの想い出を・・・。

 

 

マニュアル・オブ・ザ・イヤーを受賞

 

複合機マニュアル『スキャンの本』は、使用前の調査や準備から操作まで、スキャンに関するあらゆる内容を解説している初心者向けの取説です。A4サイズ・フルカラー全40ページ。

リリース年度に、日本マニュアルコンテスト(主催:テクニカルコミュニケーター協会)において、最も評価の高かったマニュアルとして「マニュアル オブ ザ イヤー」をいただきました。

↓ 当時の公式ホームページで紹介しています。htmlなんて、たいしてできないのに自分で書いたやつ。(涙
内容も説明していますので、よかったらどうぞ。

『スキャンの本』なら大丈夫
https://www.fujixerox.co.jp/support/manual/jma2006.html

 

neko

 

ずっと、ひとりでした

 

受賞したのは、マニュアルを書き始めて7年くらい経ったころ。その節は、ありがとうございました。

実はその前からも、上記のマニュアルコンテストでは少なからず賞をいただいておりました。

ぶっちゃけ、それらの賞がとれていたから、マニュアル改善も続けさせてもらえてたと思います。一人でも多く量産型のライターが必要だった状況では、ありがたいことだと心から感謝しております。

費用の工面も到底きびしい中、他にメンバーをつのることや外注に出すことは禁止。そのときまでミチヨ商店は、イラレもフォトショもぜ~んぜん使ったことなかったのですが、「他にやる人いないじゃん~(号泣)」と、ゼロからひとりで覚えていきました。

毎日、火事場の馬鹿力をフルスロットル。血染めのマウス、血の涙。こわっ。

hitori

 

自分の本当の目的は

 

個人的に、マニュアルを作る本当の目的は賞とりでなく、コールセンターの問い合わせ削減でした。個人的に、としたのは、上から削減の要求があったわけではないからです。自分のために、目安が欲しかったのです。自分の書いたマニュアルが、少しでも良くなっているという実感が欲しかった。

それは、「マニュアルって、誰からも必要とされていないのかな」という疑問が、ずっとぬぐえなったから。

当時は百人近くメンバーがいて、全員が必死に制作をしていました。それこそ、命を削って。そして、ものすごい冊子数、ものすごいページ量のマニュアルが発行されていました。

なのに、たった1ページも読んでくれない。誰にも必要とされていない。
「わかりづらい」「探せない」「冷たい印象がある」「手に取りたくない」「自分で読んだことあるの?」

ユーザーアンケートからは、ダメだしの言葉ばかり。
期待などされていないことは、他部門のみなさんの様子からも感じとれます。

そしてもちろん。
問い合わせ件数は、一向に減ってはくれませんでした。

sand

 

もう耐えられない!

 

ミチヨ商店は、自分にブチ切れまくり。夜な夜な酒場を飲み歩き(ウソ)、酔っ払って自転車を蹴り倒し(ウソ)、超ストレスで肥満化していた頃(本当)。

 

「なんで読んでくれないの??!!」

 

夜空に向かって絶叫したそのとき、閃いたのです。

 

「なんで読んでくれないの?」じゃあ、ない。そもそも、読みたい人なんていないんだ!

 

これが、初めて、ユーザーの視点に立てた瞬間でした。

そんな中、スキャンのマニュアルの制作依頼がきたのです。よ~し、そんならもう、今までと全部違うことしよう!全部違うことして、ダメだったらもうやめよう!と決めたのです。

sora

 

改善!改善!!改善!!!

 

つまり、こうすればいいんでしょ。

  • わかりづらい→すぐわかる
  • 探しづらい→すぐ見つかる
  • 冷たい印象がある→親しみやすい
  • 手に取りたくない→手に取っちゃう
  • 自分で読んだことあるの?→自分で読んで使う

 

な~んだ。簡単じゃない。で、こうしました。

  • すぐわかる→文字は極力使わない
  • 探しづらい→ページ数を減らす。現状500ページ→30ページ
  • 親しみやすい→日常の言葉で書く
  • 手に取っちゃう→本屋さんで売っているような表紙と内容にする
  • 自分で読んで使う→もちろんそうするし被験者テストもする

 

さらに、徹底的に内容の見直しをしました。
欲しい情報が載ってないんだ、と思ったからです。問い合わせ内容約2万件にすべて目を通して、コールセンターや営業をはじめ、お客様の近くにいる他部門のみなさんに、何度も聞きに行きました。(これは大正解だった)

そして、宣伝することも忘れませんでした。生まれ変わったよって、自社のみなさんに向けて。なぜなら、今まで誰も読んでくれなかったわけだから、内容が良くなっても、変わったことに気がつかないはずだと思ったからです。

 

とにかく、最後かもしれないと思ってたから。
悔いのないように、今までと違うことは全部やりました。

そうそう、この頃、働きながら美大に編入学したんです。自分の半分の歳の子達にまぎれて、受験しました。
アンタ、頭、大丈夫?って感じ。(笑

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その結果。

 

効果は、リリース後、すぐに出はじめました。
問い合わせ数は、前代未聞の数値を記録、約3分の1まで減少。

また、マニュアル全体に対するお客様満足度は、前年比から約40%アップしました。

そして、思ってもみなかったことも起きました。

全国の営業さん達が、どんどん発注依頼をしてくれたのです。平均の160倍の数を。
「スキャンは本当に設定がわからなくて、いまさら人に聞けなかった。これを教科書にして勉強したら、お客様に自信をもって説明できるようになった。」

またコールセンターからは、こんな声も。
「お電話中、『スキャンの本をお手元にご用意ください』と言って、一緒に見ながら操作していただいてますよ。」

hanabi

 

 

今までの苦労は、すべてふっとびました。

 

読みたい人なんて、やっぱりいないけど、なんとか役には立ってくれたんだ。

 

そして、あ~、まだ続けていいんだなと、ホッとしたような、怖いような気がしたことを覚えています。

 

そんな想い出。みんな、昔のおはなし。mi