『コンビニ人間』少し前に話題になった本。とってもおもしろかった。
次回作も読みたい!
遅ればせながら、『コンビニ人間』を最近読みました。
コンビニ人間 村田沙耶香
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。
カスタマーレビュー:517
おもしろい 374(72%)
つまらない 39(16%)
Amazonより引用 2017.08.09現在
『コンビニ人間』は、とてもおもしろかった。なんといっても、フレッシュでした。そこがいい。『スクラップアンドビルド』羽田圭介や『火花』又吉のようだと思った。がんばって、書き続けてねと嬉しくなりました。世間の評判も、上々ですね。
一方、つまらないという感想のうちのひとつは、「リアルじゃない」というもの。
小説だからリアルじゃないよ
リアルさというのは、表現上とても難しい。デザイナーとして実感しています。例えば、メタファを使ったりするんです。見せ方を新聞風、とかね。そのときにリアルを追求しないと、受け手が許してくれないわけです。
小説なんて丸々フィクションで、それはわかっているけれども。あるシーンにひっかかったりするんだよね。
コンビニという多くの人にとっての日常が舞台なので、よりリアルと小説、また主人公と自分がごっちゃになるのかも。
その結果、リアルにとらえられれば共感というプラスに働くんだけど、そう思えないと感想が「つまらない」になるのかな。リアルじゃないというのは例えば、コンビニバイトだけで生活できるわけないよ!とか。
リアルじゃないとわかっていても、感覚的に乗り越えられない。コンビニという手段をとって主題のメッセージを送っているのだけど、メッセージが届く前に手段でひっかかってしまうということですかね。
アニメならいいのか?漫画なら気にならないのか?
大ヒットした映画『君の名は。』(行かないつもりだったけど、あんまりすごいので行ったら泣いた。)
あれなんてすごくリアルじゃないのに、なんでみんな受け入れられるのかな?
実写じゃないし、もともとそういうものじゃないとわかっているからかな。ファンタジー的な。
それともやはりリアルじゃないと感じ、つまらないと思うのかな。
そのあたり、とても複雑ですよね。個々の経験や感じ方に依存するし。そして良い悪いじゃないし、全員が認める表現なんてこの世にありませんから。
ちなみに私が、他の作品の中で「ないなー」と感じたことがあったのは、『ハチミツとクローバー』。美大や作品を作るところの随所で、違和感がありました。だがしかし、全体の感想にはたいした影響はないです。私にとっては、お話自体がおもしろければよいので、大変おもしろかったです。今は『3月のライオン』も読んでます。
(東村アキコの『かくかくしかじか』は、結構あるあるだった)
私がガッカリするところはですね
よくあるのは、映画やドラマ上でのデザインの扱いですね。デザイナーとか出てきて作品が画面に映り「マジか!」と。主人公はトップクリエイターであるはずなのに、(こりゃヒデエみたいな)作品がバーンと出てきて登場人物ビックリみたいなシーン。ねえよ・・・、と思ってしまうけども。
でもこれも、本筋がおもしろければ別に気にならないです。
しかし、主題にリアルのなさを感じとってしまうと、そりゃあ興ざめですわ。つまらない!となります。
例をあげるならば、私にとっては映画『パッセンジャー』です。
主演の2人、『X-MEN』のジェニファー・ローレンスと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットに、なんてことしてくれたんだよ!とブチ切れましたとも。
未来の宇宙の話なので、リアルもクソもないのですが。宇宙とか、宇宙船とかアンドロイド、宇宙線内のエピソードとか。そういうアイテムや小道具にはお金をかけていてお見事でした。美しかったです。
だがしかし。
ストーリーがダメよ。あなた、人生ってこんなにペラペラじゃないでしょと。中高年の私が通りますよ、と。
手段じゃないよ、本質だよと。ここは、いち表現者としても譲れないっすねー。
でも、世間の評価はそれほど低いわけでもないから良かった。2人の俳優さんがとっても好きだから。
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