デザインの仕事に加え、音声ガイド・ディスクライバーを始めました。

空白の2年の間に

音声ガイドってご存知ですか。美術館等にあるオーディオ解説の音声ガイドとは、ちょっと違います。目の見えない、見えづらい方に向けて映画やテレビの視覚情報を言葉で伝えるナレーションのことです。映画館ではスマホのアプリで、テレビでは副音声で聞けます。

↓少し前、音声ガイドが出てくるドラマがありました。もちろん作品にも音声ガイドがついてました。



https://www.ntv.co.jp/yangaru/

 

きっかけは2020年。コロナが猛威を振るい出した頃に本を出版し、せっかく作業が終わったのに外出できなくなっちゃって。要約筆記の仕事も派遣先のイベント中止が相次ぎ、すべてキャンセル。なーんにもすることなくなった。

で、始めたことが2つ。
1つは編み物とソーイング、もう1つが音声ガイドです。

ガイドのナレーションは声優さんが担当し、その台本を書く人を音声ガイド・ディスクライバーと呼びます。ライブガイドといって、映像を見ながらその場で解説を付ける一人二役の音声ガイドもあります。

私が始めたのは、台本を書くほうの音声ガイド・ディスクライバー。
文字で映像を説明する。セリフや音や、音楽のすき間に入る言葉を選び、主に声優さん用の台本に仕上げる仕事です。

 

これも情報デザイン!

音声ガイドを始める前は、今まで何十年と育ててきたデザイナーの能力がまったく役に立たないだろうと思っていた。視覚情報でわかりやすく伝える。そこがバッサリ使えないと。

でも、「情報デザイン」という観点からすれば同じものだと気づきました。
わかりやすく伝える→届く、その先のこと。

私は、消えてなくなるのが良いデザインと思ってます。消えるというのは、相手が意識しないということ。その理由は、自然なサポートならば目的である「行動」に即、移るから。気にする暇もないということです。

例えば初めてPayPayで支払ったときとか、完全なセルフレジにトライしたときとか。知らないと少し不安ですよね。もし自分1人でもスムーズにできたとしたら、画面やUIデザインが優れていたはずなんだけど、覚えてないでしょう。「できた、よかった」ということしか。

ボタンの色や形、位置のおかげで迷わず操作できたとしても、そんなの思い出しもしないでしょ。こんな風にデザインが消えるのが、私の理想です。

資料等のデザインも同じ。対面でプレゼンして「綺麗な資料ですね」なんてお言葉をいただいたら、だいたいアウト。相手は気をつかってくださったんだろうし、ありがたいことなのだけど、資料の内容が理解できなくて「綺麗」とか口から出ちゃったのかな、つまりそこしか褒められなかったんだなと。

相手から欲しい言葉は「よし! この企画やりましょう!」。行動を起こしてもらうことですからね。

 

音声ガイドの試練

視覚と聴覚の違いはあれど、両方とも表現。伝える手段が違うだけ。なので、セオリーは同じわけです。これは衝撃的な発見でした。

資料作成講座などで偉そうにお話していることすべてが、自分に返ってくる。

情報を取捨選択する、とか。

全部伝えたら何も伝わらない、とか。

優先順位をつける、とか。

違和感を持たれたら先に進めない、とか。

信頼を失うと、それが理解を遠ざける、とか。

同じことを重ねて伝えない、とか。

音声で伝えようしたとたん、何もできない自分にがっかりです。

 

下手なのは自分でもわかる。上手くなりたい。でも、何からしたらよいかわからない。これも、対応策は視覚と同じ。

良いものを真似るのが近道。

でも、その良いものがどんなものかわからない。

わかるためには、たくさん見て、目力を鍛えるしかない。

ぜ~んぶ、自分がみなさんにお伝えしてきたこと。
なのに、全然できない! でも、やるしかない。だって表現が好きだから。

 

デビュー作は「未来日記」

ということで音声ガイドの学校に行き、ぎりぎりでテストをパスし、現在はボチボチ仕事を受けるようになりました。

約20年前、社会現象にまでなった大人気恋愛リアリティ番組「未来日記」が、Netflixで現代版にアップデート。これが私のデビュー作です。

https://about.netflix.com/ja/news/the-future-diary-cast-interview

 

2話と6話を担当しました。副音声でガイドを聞くと、クレジット画面で担当ディスクライバーの名前が読み上げられます。ちなみに、画面での表記はありません。あくまで音声の担当だから。(そこも気に入っているとこ。)

そして今週、シーズン2も始動しました。

こちらも、2つ担当しています。

音声ガイドをつけるにあたり、大げさでなく何百回も繰り返し動画を観ます。そのせいもあるのか、登場人物のことがすごく好きになってしまう。彼らが泣いたりすると自分も動揺して、つられて泣いてしまったり。

Netflixに加入している方は、よかったら見てみてください。
今どきめずらしい、毒のないお話です。

 

音声ガイドを始めたことで、みなさんの気持ちが良くわかりました。
私もできないけど必ずできる日が来るから、一緒にがんばりましょう!mi