事例の中から、引き続きマニュアルについて書きたいと思います。
今回は、音声読み上げソフトの使い方を説明するマニュアルをご紹介します。
事例紹介・音声読み上げソフトの説明書『ボイス・ボイス・ボイス』
目的:
- 目の見えづらいかたの支援。人に聞かなくても、自分だけで操作できるように
考え方:
- できるだけ見えやすくわかりやすいページにとはいえ、魅力のないページはダメ!
- 健常者と同じようにデザインを享受できるもの
コンセプト:
隣の席の人から「ステキな本、持っているね」と言われて嬉しくなる本。タイトルも「ボイス・ボイス・ボイス」!
主な施策:
- 自分だけでもできそう、と思ってもらうことが何より大切。わかりやすく
- サポーターさんのページだとすぐにわかるよう、文字は小さめに
- 読みづらい配色、コントラストはさける
- 応援していますという気持ちを伝えるため、コンセプトは「つながる」
- 読みやすいフォントを採用
- 通常より大き目の文字サイズにするので、文字数はより少なく
仕様:A4サイズ・フルカラー・44ページ・PDF
受賞歴:
- 日本マニュアルコンテスト 部門優秀賞受賞
- 同企画賞受賞
当時の説明資料より
制作当時に、社内外に向けて紹介するとき用に書いた文章です。
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マニュアルで、いったい何ができる?
このマニュアルの制作がスタートしたときには、何から手をつけたらいいのか皆目見当もつきませんでした。それまで、目の見えないかたにお会いしたことがなく、音声パソコンの存在さえ知らなかったからです。
けれども、実際に音声パソコンをお使いになっているみなさんとお話を重ねるうち、期待されている役割は他のマニュアルと何も変わらないことに、恥ずかしながらやっと気がつきました。
施策として、①できるだけストレスなく操作できること、②ご自分でどんどん触っていただける工夫をすること、③サポーターさんときっちり役割分担してもらうこと、④持っていて自慢できるマニュアルにすることなどをあげ、社内外の全盲・弱視のかたに手伝ってもらい、また被験者テストも行いながら、作ってはボツを繰り返しました。
音声パソコンは、見えないかたにとって大切なコミュニケーション手段のひとつです。これから、ますます必要とされる時代になることでしょう。
製品とマニュアルが職場でのコミュニケーションの輪を広げるきっかけになることを、そしてみんな笑顔で仕事ができることを願って、このマニュアルを作成しました。
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色覚バリアフリーにも配慮
できるだけ、誰からも同じ印象を持ってもらいたかったので、色の選択にも気をつけました。
↓ 上:オリジナル 下: P型色覚シミュレーション
↓ 上:オリジナル 下: P型色覚シミュレーション
関連記事:
https://314-store.com/blog/デザイン/カラー/プレゼン資料の色も、もっとバリアフリー(2)/
感想ひとこと
これは、社内で有志をつのり、実際に見えづらいかたに被験者として参加してもらって作ったマニュアルです。勉強することばかりで、企画からして書いては壊し、書いては壊しの繰り返しでした。
あまりにも全然進めなくて、焦りまくった。それでも、もう手当たり次第という感じで、目えない人や見えづらい人のところへ奔走した。社内のみならず、役所や点字図書館にまでおじゃましてしまった。
とっても怪しい女だったのに。みなさん、良くしてくださった。本当にありがとうございました。
ですから手伝ってくださったかたへ、少しでも役に立つものにしたい一心で仕上げました。
ところが終わってみると、みなさんは完成マニュアルのできよりも、ご自分たちが役に立てたことが嬉しかったとおっしゃり、それじゃあ逆じゃん!と思って、とても不甲斐なかった。
一般の人に見せると、「文字少なくていいね~。マニュアルはみんなこれくらいにしてよ」と、必ず言われた。
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