津村記久子著。オススメしてくれた方がいたので、ガッと読みました。これは不思議感覚。

 

短編なのでいっきに読める

 

地質調査会社の社内機として使われている大判プロッタ(やや難アリ)と、それを業務で使うユーザーさん達に起きた日常的な事件のお話。

ところどころ、ふふってなった。

私、某複合機メーカーに20うん年在籍していました。複合機にもプロダクトやUIデザイナーがいて開発君がいて、ラインがあって営業がいて、サポートセンターがあってエンジニアがいるんですよ。

この小説に出てくるプリンターのマシン名は「アレグリア」といいます。そう。メーカーは複合機にも、車のレクサスとか プリウスみたいに名前をつけるんですよね。

アレグリアって、実にありそう。すごく。私がトリセツとして書いてたのは、「Apeos」といいました。読める?「DocuCentre」なんてのもあった。読める?

これに対し市場に出回る前の開発中には、ニックネームをつけるんですよ。ご存知でしょうか。

ミチヨ商店はこのニックネーム達が大好きだった。というか、ニックネームしか知らないことも。製品名とかさ、秘密だから。正式なあだ名で呼んでるわけです。だから製品リリース後に販売名を知ったりしても、なんか結びつかなかったりして。

えっ、あいつのこと、そう呼んでるの?みたいな。

 

擬人化、しないの?

 

ミチヨ商店の場合、生活していての擬人化は、めちゃくちゃします。それは機械だけでなく、何に対してもです。周りのものすべてかも。対象物が生きてなくても生きてても、みんな人ですね。なんでか?そんなこと、考えたこともないけど。

機械類に対しては「ごめん」とか「がんばって」とか、良く言います。たとえば、洗濯機のフタを開けっ放しにして回していると、ある時点で「ピーピー」とアラームが鳴ります。フタ閉めてくんないとアンタ、水いれられないっしょ、と聞こえる。そのとき、「あっ、ごめんごめん」と言って駆けよります。

愛車の自転車を倒してしまったとき。イデデ、と聞こえます。小声で「ゴメン」と言う。

名前も、付けることもありますね。先の自転車は、「ミチヨ1号」です。2号はクルマ。運転できないけどね!

まあ、いろんなものについてます。あまり、ひねりはない。ベランダにくるヒヨドリは全部「ヒヨちゃん」。近所の良く吼える犬は「あの犬」。隣の奥さんは「リーダー」。しきってるから。(秘密)

animal-dog-outside-pet

 

みんなそうかと思ってたんだけど

 

気がついたらそうしていたので、どうしてそうなったかわかりません。子供の頃からそう。しかも、どこの家もそんなもんかと思ってました。でもこの小説の主人公は、そのあたりを隠しています。

機械を擬人化するから、相手は機械なんだけど人だけに悔しいと思ったり。ずるいと思ったりね。そして、そう感じることを恥ずかしいとも思っている。そうだな~、それがたしなみ、というような感じ。

そんな、不器用さを切り取った小説でした。紹介してくださり、ありがとうございました。新鮮な気持ちで読みました。おもしろかったです。読書中は、妄想しまくりで。やっぱり読書はいいですね~。

 

そして、この主人公には幸せになってほしい、と思うのでした。中の人、なのにね。mi