ガイドで描き切れなかったー!という反省を込めて、ディスクライバー視点の補足情報を綴ります。推測やネタバレ満載なのでご注意ください。

あらすじ

夢に憑りつかれた少女・アズマユウ。アイドルになるための計画を進める中で、ユウは様々な困難にめぐり逢う。東西南北の〝輝く星たち〞を仲間にしたユウが、高校生活をかけて追いかけた夢の結末とは…。(パンフレットより)

続いて、主人公ユウについて、夢の実現計画、仲間たち、服装、そのほかです。

主人公・ユウってどんな子?

●プロフィール
苗字は「東」と書いてアズマ。16歳、高1。東京から在来線で片道2時間かかる海沿いの町に在住。集合住宅に母親と二人暮らし。兄弟や父親の気配はありません。カナダからの帰国子女。左利き。

勉強や塾、お稽古ごととは無縁。得意な教科は体育、特にダンスでしょうか。部活には入っていない。バイトもしておらず、友人や彼氏はいない。

●性格
頑固一徹で負けず嫌い。明るくて物おじしない。興味がないものについてはどうでもよく、空気は読まない。人と群れるのは苦手。悪気はないのだが、毒はかなり強いです。手を首に当てて深呼吸するのが緊張したときのクセ。

●日常
「おいおい、もうちょっとどうにかならないかね。」と突っ込みたくなるほど、可愛い小物やおしゃれには無関心です。部屋着は中学時代の体操服。緑色に白の3本線で、胸に縫い付けた「あずま」の名札もそのまま。

SNSはやらない。自室に篭りネットでラジオを聴きながら夢の実現計画を練っては、実行に移す毎日。綿密なプランをそっけないキャンパスノートB5に記載し、いつでもチェックできるよう持ち歩いている。「その情熱を勉強に当てろ。」と言わない母親に感謝して欲しい。もはやボロボロになっているノートは、誰にも見せたことがない。

実現計画

●アイドルとの出会い
いつもひとりなのは小さい頃から。学校から戻ったある日、なんとなくつけていたテレビでアイドルを見る。可愛らしい服を着てスポットライトを浴びながら、歌って踊る姿に衝撃を受ける。

このときから、自分の人生においてアイドルがすべてになる。憧れたり応援する側でなく、アイドルになることを目標とするのはユウらしいと思いました。そして持ち前の実行力でオーディションを受けまくり落ちまくった結果、普通に可愛いだけではダメなのだと気づく。

●プラン(ほぼ推測)
諦めるという選択はないので、どうすべきかを調査・立案。やってはいけないことやマイナスポイント、逆に積極的にすべきことや有利なこと。それで個人よりグループだとひらめいたんではないでしょうかね。同時に苗字の「ヒガシ」を活かして、「東西南北」を思いついたのでは。

仲間たち

出会った順番でいきます。

●蘭子
ユウより1歳上。超お金持ちのお嬢様でお蝶夫人に憧れているところを抜かせば、とっても常識人。周りに自然な気遣いができる。蘭子がいなかったら4人は成り立たなかったと思う。ヘアスタイルはお蝶夫人を真似てロングの縦ロールなのですが、これから登山というときに、一番、巻きが強かったのには笑ってしまいました。

クルミ
ユウより1歳上。高専でロボット研究会に所属する秀才だが、見た目は萌え系というギャップあり。色素の薄い茶色の髪と瞳、タレ目で小柄、いつも萌え袖だが、あざとさはなく女子にも好かれる。実はひとりでずっと研究していたいタイプ。地に足がついており、目立つのは好きではない。人見知りが激しいが蘭子とはいいコンビです。

美嘉
ユウと同級生。いじめで不登校、整形・転校、またいじめで不登校。なかなかに厳しい人生。ボランティア活動に出会ったことで気持ちはだいぶ落ち着いたものの、やはり心を許せる友人が欲しい。そんなときカナダから帰ってきたユウと再会。すごく嬉しかったんだと思います。ユウは雑だから?、美嘉の気持ちはわからなかろう。

●4人の共通点
みんな、友人や兄弟がいない。かつ、周りからちょっと浮いている。ここはポイントだと思われます。

そのほかの登場人物
シンジ:理系のメガネ男子。髪は天パ、シャツにデニム、細身です。学園祭で超ミニの赤いワンピ姿を披露したときには、仰天しました。声はJO1のメンバーが担当していて、ピッタリです!

サチ:車いすに乗った両足義足の女の子。ショートカットで前髪にカラフルなピンをつけ、いつも元気な笑顔を見せてくれます。アイドル好きで、ユウの2番目のファン。1番目は誰か?

古賀:金髪ロンゲの女。頭頂部が黒くなっているがそのまま。酒もたばこもやるだろう!という感じ(個人の印象)。裏表のない、いいヤツです。

遠藤:芸能事務所の社長。茶髪にダブルのスーツはバブルですかというイメージ。しかしながら沈着冷静で礼儀正しい。人は見かけによりません。

服装

制服やアイドルの衣装も気になります。

制服
ユウ:城州高校1年。紺のシングルブレザーに膝丈のスカート。白いブラウスの首元に緑色の細めなリボン。蘭子の学校に侵入したとき、女生徒に「ダサイ」と言われブチ切れる。

蘭子:聖南テネリタス女学院2年。清楚な白の上下に、黒いラインがアクセント。白いブラウスに赤いタイ。秋冬のロングコートもドレッシーです。髪には赤い大きなリボン、ここは譲れない様子。

クルミ:西テクノ工業高専2年。制服がない。ユルふわの髪で、前髪を下ろしウサギのヘアゴムでちょんまげ。オーバーサイズのスウェットにミニスカ、ウサギの顔のリュック、足元はダッドスニーカー。

美嘉:城州北高1年。意外にもミニスカート、首元に同素材のリボン。白いブラウスの上にベージュのカーディガン。長いストレートの黒髪。このスタイルでも陰があるのは否めない。

●ロケハン時代の衣装
4人とも同じデザインのつなぎ。ユウは青、蘭子はピンク、クルミは黄色、美嘉はグリーンの色違い。このカラーをアイドルの衣装にも引き継ぐ。
着こなしは、蘭子が上品なスカーフを巻き、クルミが下にパーカで足元はダブダブ、美嘉は下にTシャツ、胸元のボタンをはずして足は片方ロールアップし足首見せ。ユウは、ただ着ただけ。らしさが出てます!
ちなみに、つなぎの胸に矢印のワンポイントがあり、ユウは左、蘭子は下、クルミは右、美嘉は上向き。それぞれ東西南北を表している。心憎い!

●アイドル時代の衣装
テイストは同じで色違いのワンピース。白でアクセント、フリルなどのディティールで違いを出している。髪はゆるくウェーブをかけ、お花の髪飾りをプラス。

ユウ・青:両肩を出したデザインだが、下から白い襟とかっちりしたベストが覗き露出は控えめ。スカートは前上がり。

蘭子・ピンク:片方を肩出し、縁をフリルで彩る。ウエストの横に大きな赤いバラをつけて、そこからも白いフリルが溢れている。スカートは膝丈。

クルミ・黄色:肌の露出なし。ケープのように上半身全体にフリルが施されているうえに白襟なので、幼稚園のスモックのよう。スカートはそこそこ短いが、小柄に合わせて単にバランスをみた感じ。

美嘉・グリーン:髪はポニーテール。ホルターネックで肩出し。腰から斜め下にフリルが流れ、その下に心配レベルの超ミニ。無茶するな。

●8年後
みなさん、26,7歳になりました。


ユウ:インタビューを受けているユウの衣装は、原作本の表紙と同じ、水色のレースのワンピースです。髪型はアイドル時代とだいたい同じ。いまだ、ファッションやメイクに興味がないのか、大丈夫か。

蘭子:自然に下ろした長い髪に、大きめのイヤリング。赤のタートルニットの足元はショートブーツ。黒のロングコートのウェストには同素材のベルトを大きくリボン結び。やっぱりリボンは好きなのね。

クルミ:髪は耳下のボブ。グレーのワイドパンツスーツに、黒のペタンコ靴。アクセサリー類なし。白ブラウスのボタンは、一番上まできっちり留める。似合ーう!と思った。

美嘉:お腹が大きい!ピンクのマタニティドレス。バッグはトートバッグ。足元はスニーカー。長い髪をシュシュでまとめて、幸せな奥さんて感じ。よかったね、美嘉さん。

そのほか感想と共に

・全編通し、ユウの心象風景が多々出てきます。天気もそうだし、信号機なども。ユウがその時にどんな気持ちでいるかの参考になれば幸いです。

・海が近いです。電車は海沿いを走っているし、シンジと歩く道や、自宅のベランダからも見えます。磯の香りや波の音に、いつも包まれている感じ。

・シンジと作戦会議をする喫茶店は、ムチャクチャ昭和風。2階席があったり。星座関連にしても、星占いのおみくじ機が各テーブルに置いてあったり。クラシカルなインテリア、赤いベロア風の向い合うソファ、タイルの床だったり。「ボン」という店名もそれっぽいですね。

・原作はシンジの一言で終わります。そのエンディングも捨てがたいです。

・結局、「トラペジウム」って何なのか? まだ知らない方は是非ご自分で調べてみてください。

個人の感想です(ネタバレ)

アイドルものと思っていると怪我をする作品。観終わってまず浮かんだのは、川上未映子著『黄色い家』でした。

以下、特設サイトから。

2020年春、惣菜店に勤めるハナは、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たないハナたちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ〞に手を出すことになる。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに崩れていき……。

ユウには、メンバーを利用している認識はなかったんだと思います。アイドルは憧れの的なんだから誰だってなりたいはず、チャンスを掴んだのにみんなは甘すぎる、ここは自分が引っ張って行かなければ。リーダーってか別にリーダーじゃないけど、誰もやらないから仕方ないかという風に。

アイドルの話ではないのですが、『黄色い家』も同じです。当初はみなんなで楽しくやってたんだけど、ズレがだんだ大きくなっていく。最後の最後で突然気持ちを突き付けられたリーダーは、「えっ!みんな同じ気持ちだったんじゃないの?」と唖然とする。寝耳に水。『黄色い家』はそこで空中分解してそれぞれが重い傷を負うのですが、『トラペジウム』は真逆。生涯の友となります。

これはやはり、4人はアイド以前に友だちだからだではないでしょうか。

登場人物には共感できなくても、「人間て、そういうとこあるよね」といった種類の共感も存在します。私は、「高校生なのに、みんな大変だったね。ダークサイドを良く乗り越えた。偉い!」と感じました。ユウの締めのセリフはなんだか上からで正直違和感がありましたが、ユウに気を許した自分が間違いで、そういうとこ含めてユウなんでしょう。笑

 

映画『トラペジウム」』、どうぞ楽しんで!mi